第六回 新・経済連続講座「深刻化する財政問題 -アベ家の家計簿を解説-」

新・経済連続講座第6回「深刻化する財政問題 -アベ家の家計簿を解説-」
アベ家の家計簿と赤字 国債と赤字の財政政策 財政政策の誤りと国民生活の逸失利益

    2018年2月 担当;眞嶋康雄     (練馬文化の会「会だより」2018.2 月号別紙)

今回の「新・経済連続講座第 6 回「深刻化する財政問題-アベ家の家計簿を解説-」として日本の財政政策の誤りと損害=国民の逸失利益について解説。
 キーワードと統計で解明、財政問題
 (1)アベ家の家計簿と財政問題
◎「アベ家の家計簿」下図(日経 2015.12.25 記事。財務省資料より作成)。1千億円を1 万円に換算。
国の予算を家庭の例えると、総収入928 万円に対し年収 591 万円,残り 337 万円はローン借入れ。総支出928 万円のうち,ローンの元利金返済に 233 万円,銀行ローン残高は1 億4 百万円、実際は1 千4 百兆円、毎年増え続けています。アベ家の家計は「火の車」!日本は世界一の借金国、アベ首相は世界一の借金王です。

◎「アベ家」はなぜ破産しないのか?PartⅠ
家計と違い、国は毎年徴税権を行使し、一定の税収が確保できる。家計ではお父さんが失業して収入が無くなるが国は「破産」はしません。

◎上図は国の歳入と歳出=「一般会計」を家計に例えたものだが、財政にはもう一つ「特別会計」がありたこれを合算したのが「国の財務書類」。国の財政状態を貸借対照表(BS)で示したのが右の図。平成28(2016)年末現在,貸方負債総額 1221.6兆円に対し借方資産総額は672.4 兆円で借方・貸方差額、不足額=債務超過額548.9 兆円に達する。貸方には公債(国債)発行残高943.3 兆円の存在が決定的です。
◎一般企業では債務超過は貸方の資本が存在せず、破産・倒産を意味します。
昨年 3 月に破産した旅行会社の「てるみくらぶ」のBS(貸借対照表)は予約客から受け取っていた貸方「前受金(負債)」が 100 億円に達し、本来あるべき「資本金」も全く無い。一方、借方「現金・預金(資産)」はわずか2 億円しか存在せず、運転資金に不足し、他の資産もほとんど無く、貸方合計153 億円に対し借方合計は約 28 億円、差し引き約 126 億円の「債務超過」となり、3 月に破産・倒産しました。
◎「アベ家」はなぜ破産しないか?PartⅡ
同じ巨額の債務超過でも「てるみくらぶ」は破産、「アベ家」は破産しない「秘密」は、PartⅠで述べたように国の「徴税権」による収入である「税収」ともう一つが収入の約34%を占める「銀行」からの「借金」・借入れで、残高も1 億円を超え毎年の支払利息と返済分は支出の約 23%も占めています。「普通の家庭」だったらとっくに破産していますが、「アベ家」は普通の家庭では無い特殊中の「特殊」なのです。その「特殊」は「銀行」と借金との関係とその実態です。
(2)「アベ家」の大赤字・大借金の正体
◎前章(1)「アベ家」はなぜ倒産しない?で述べたように倒産しない秘密は第1 に、「借金」の正体です。この借金は実は国・財務省が「資金調達」のために発行する「国債」です。国債はいわば「借金証書」のようなもので、国債購入者・資金提供者に渡され、毎年「利息」も受け取れるもので、国債市場で売買されます。株式と違って確実に返済・償還と利息受取りが保証される「ローリスク・ローリターン」の安全資産でした。

◎アベ家」の「銀行ローン残高」の実態を見ると、日本銀行の統計ですが、「マネタリー残高」とは主に国債発行による市中に流通する資金量を表し、「長期国債保有残高」とは財務省が発行した国債を日銀が購入した残高です。「当座預金残高」は一旦、金融機関が財務省から購入した国債を日銀が直ちに買い入れ、その代金として日銀が預かっている事を示します。2017 年末現在はマネタリーベースも長期保有残高も日銀当座預金残高も2 倍超になっています。日銀による国債の「爆買い」が「アベ家」の破産しない秘密で、詳しい説明は後の機会にしますが、つまり「アベ家」を支えているのが日銀そのものなのです。財務省の発行する国債の発行残高は 1000 兆円を超え、対GDP比の200%は世界一、敗戦直前の昭和19年当時の比率を超え「第2の敗戦」ともわれています。

(3)異常な財政政策の失敗
◎財政政策の目的は?
日銀の財政政策の目的は「2%の物価目標」と言われましたが、6 年目に入っても達成できず、下図2015 年の物価上昇は8%消費税増税の影響です。

◎巨額の国債発行の要因は?
なぜ、巨額の借金、国債発行して財政赤字を発生あさせているのは単に「社会保障費の増大」にあるのでは無く、究極の要因は経済政策の失敗、経済成長の停滞、その結果の税収の減少です。税収の減少は「税制問題」で扱ったように「税制構造の歪み」も要因で、税収の増加を実現できない政策の誤りにあります。

 お知らせ

第4回公開講座「深刻化する財政問題-アベ家の家計簿を考える-」
 3月17日(日) 午前10時30~
練馬ココネリ 第4 研修室 資料\300
※広く経済に関する参加者の疑問、質問、意見に答え、参加者と共に考えるフリートークにもご参加を。

※参考文献
①山田博文『99%のための経済学入門第版』 大月書店 2016.7
②山田博文『国債がわかる本―政府保証の金融ビジネスと債務危機―』 大月書店 2013.5
③建部正義『なぜ異次元金融緩和は失策なのか』 新日本出版社
2016.11
[5] 河村小百合『中央銀行は持ちこたえられるか-忍び寄る「経済敗戦の」の足音』 集英社新書 2016.11