第四回 新・経済連続講座「消費税・税制の問題とは?」

新・経済連続講座第4回 「消費税・税制の問題とは?」
ブラックボックス化された税制・税の歴史・消費税とは・本当の税収・税を考える

    2017年11月 担当;眞嶋康雄     (練馬文化の会「会だより」2017.10号別紙)

はじめに;前回(第3回)では第4回を「雇用・労働問題と国民生活」を予定していましたが、総選挙でも議論にもなり、今後の政策の焦点の一つになる消費税と税制問題の講座を行います。
(1)税の歴史
日本の税の歴史。5 世紀の律令国家の成立と共に全国的に「租(収穫物の 3%)・庸(労役)・調(物納)」の税制が実施され、このほかにも「雑徭(労役)が課せられた。平安、鎌倉時代は荘園が発達し年貢制に。室町時代には商業も発達、商工業者の「座」へ「座役」を課した。豊臣秀吉の「太閤検地」で石高制確立、封建制の土台に。江戸時代は「五公五民」から「六公四民」へ、1400 種類の税も。商品経済、貨幣経済の発達で封建制の土台の年貢制は有名無実になり、封建制の崩壊、明治維新へ。1873 年の「地租改正」で金納制に、1889 年所得税導入、別名「名誉税」15 円以上納税の 25 歳以上の男子に選挙権、普通選挙権は大正時代になってから。1936 年の満州事変から日中戦争始まり「戦費調達」で電気・ガス税、源泉徴収導入、増税でも不足、「戦時国債」発行、1944 年発行残高対「GDP」比 200%超え、実は現在も同じ、平成の「戦時経済」状態にある。戦後、「シャウプ勧告」で税制整備、青色申告制など導入したが、政府は勧告を無視して源徴収を存続。1989 年 3%消費税導入「間接税と直接税の比率を是正」、1997 年 5%増税「財政赤字穴埋め、福祉財源」、2014 年 8%増税「!&♯×◎△々?」。
(2)一般消費税の特異性
日本の一般消費税はフランスで 1954 年に導入された付加価値税を参考にしていると言われています。売上税と共に「消費税」と呼称されますが、日本の一般消費税は極めて特異です。何故なら医療費、教育費などの非課税以外に殆ど全ての商品とサービスに一律に課税、なおかつ全ての流通段階に課税する「多段階課税方式」などです。かつてり琉球では一定の身長に達したら課税される「人頭税」がありましたが、年齢を問わず全ての人々の消費行動に、生存のための購買に課税するのは「特異」にして異常で、税負担の公正性や「応能原則」に反するものです。一例を挙げれば低所得層の負担率が高い「逆進性」が強く、「図表1」で明らかになっています。

(3)税とは何か、税制の基本点
税制は国民経済の基本、財政の土台です。また、古今東西、人々の権利・生活の利害に関わる経済民主主義の問題です。また、国民経済の循環、再生産に最も重要な付加価値を産出する企業部門から政府部門や家計部門へ所得移転・再分配の機能を担う重要な役割を持っています。

(4)税構造の分析とキーワード
1)国税収納金・歳入組入額・各税還付金の推移日本のブラックボックス化された税構造を理解するには「徴税=収納済額」「一般会計税収=歳入組入額」「還付金」の三つのキーワードの理解が必要です。国は国税庁を通じ徴税を行ない、国庫に収納し、財務省が国の予算として算入する流れがあります。普通、新聞発表などの「税収」は「一般会計税収」を指し、「収納済額」「歳入組入額」や「還付金」は報道されませんが、この三つこそ税制構造の歪みを解明するキーワードで、「図表2」は三つの関係を示しています。

第 1 に、8%増税した H.24 から H.27 にかけて収納金が大幅に増加したが、肝心の歳入組入額は H.2 の 60.1 兆円を超えていません。H.24、H.26、H.27 はそれぞれ 54.7、57.2、57.6 兆円でした。図表では各税還付金は右肩上がりに増える一方、歳入組入額と収納済額との差が開き、税制構造の歪みがここに表れています。この歪みを解明する鍵の一つが「各税還付金」です。

その今に、収納金の推移を「図表3」でみよう。H.2 から消費税の収納済額の金額を著しく増加しており、7.2 兆円から 26 兆円、比率も 11.2%から 36.5%へと増加して、共に第 1 位です。一方、所得税と法人税の金額を著しく減少させており、特に、法人税は H.25 以降連続して 12%台に低迷し続けて収納済額においても消費税が最も中心である「基幹税」となっています。
「図表4」は歳入組入額の推移で消費税の金額が収納済額と比べ、著しく減少し、金額と比率は所得税に次いで第 2 位となっていますが、収納済額との差額約 9 兆円、消費税還付金の存在が大きく影響しています。

次に、「図表5」と「図表6」では収納済額と還付金都の関係を検証してみます。


還付金の特徴は第1に、H.14 から H.18 までとH.24 から H.27 までの収納済額が増加傾向に時期は共に増加傾向にあり、H.19 から H.21 の時期に収納済額が減少傾向の時期には逆に金額が増加する、また納済額が増加=好況時でも、減少=不況時でも還付金の金額が増加するメカニズムが働いています。第2に、消費税増税で収納済額が減少しても、増加しても、いずれも各税還付金の比率が高くなるメカニズムも働いています。(続きは11.11 第2回公開講座で、ぜひ、ご参加ください。)

次回予告 新・経済連続講座第5回 「消費税、税制の問題とは?Ⅱ」