上映作品紹介

デジタルで甦る8ミリの沖縄

ドキュメンタリー 2021年 90分 監督:真喜屋力

1950年代から70 年代にかけて、沖縄で暮らしていた市井の人びとの手で撮された貴重で懐かしい 8 ミリ映像の数々…もしかしたら埋もれ消えてしまったかもしれない沖縄の戦後の日々、風景、家族、お祭り、さまざまな行事…二度と帰らぬあのとき、あのころが甦る。那覇では公園での野外上映も行われているとのこと。デジタル化作業の中で、沖縄以外の土地で撮られた映像も新らたに加わり、真喜屋力さんの解説で観る。東京ではめったに観ることのできない、ねりま沖縄映画祭で毎年、好評を博す企画。


だからよ~鶴見

劇映画 2020年 70分 カラー 監督:渡辺熱

舞台は戦前から多くの沖縄出身者が移り住み、沖縄にルーツがある日系南米人も多く住む横浜市鶴見区の商店街。沖縄県外では唯一、沖縄角力(すもう)の大会が行われる鶴見で、沖縄角力の大会に挑む、地元商店街の若者の恋や友情を描く。チャンプルーのように混じり合った異文化が息づく街、鶴見の魅力を発信する地域発信型映画。主演は沖
縄出身のお笑いコンビ「ガレッジセール」の川田広樹。音楽は三線とギターの融合で新たな音楽シーンを奏でるかーなー・なみなみ(いーどぅし)。


ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶

ドキュメンタリー 2019年 105分 カラー(一部モノクロ) 監督:太田隆文

第2 次世界大戦時に日本で唯一の地上戦となった沖縄戦を、体験者や専門家の証言とアメリカ軍撮影の記録フィルムによって、沖縄上陸作戦から戦闘終了までを描くドキュメンタリー。戦争末期の1945 年、日本軍の劣勢が続く中、女性や子供、老人までもが動員され、日米合計約 20万の戦没者のうち沖縄県出身者が 12 万人以上、当時の沖縄の人口の 3 人に 1 人が亡くなるという凄惨 ( せいさん ) な戦いの真実を調査した。当時、満州で戦線に立った宝田明と、原爆の悲劇を描いた「きのこ雲の下から、明日へ」を上梓した斉藤とも子がナレーションを担当。監督は原発事故を描いた『朝日のあたる家』などを手掛け、本作が初の長編ドキュメンタリーとなる太田隆文。


生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事

ドキュメンタリー 2021年 118分 カラー(一部モノクロ) 監督:佐古忠彦

「生きろ」。沖縄戦の渦中、県知事の島田叡は、周りの人々にそう言い続けた。自決や玉砕が美徳とされた時代、敗戦必至の45 年 1月に赴任、6月に南部で消息を絶つまでの島田の知られざる軌跡を追う。「県民二対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」、海軍次官あて打電した大田海軍司令官との親交なども交え、当時の島田を知る人々の証言から、沖縄戦の実相もまた照らし出されていく。鉄血勤皇隊として血みどろの沖縄戦に動員された故大田昌秀元県知事は語る、「行政官として本当に尊敬すべき、本物の人物じゃないかと思います」と。
今年3 月の公開から沖縄でロングランが続いた。「カメジロー」二部作で沖縄戦後史に切り込んだ佐古忠彦監督の最新作。


夜明け前のうた 消された沖縄の障害者

ドキュメンタリー 2020年 97分 カラー UDCast 監督:原義和

かつて日本に存在した精神障害者隔離制度「私宅監置」。その実態に迫ったドキュメンタリー作品。「私宅監置」とは、自宅敷地内の小屋などに精神障害者を隔離する措置のことで、1900年に制定された精神病者監護法に基づく制度である。隔離された人たちは人生を奪われ尊厳を深く傷つけられた。
日本本土では1950年に禁止になったが、沖縄では本土復帰の 1972 年まで継続され、その後も公的な調査や検証は行われていない。沖縄でこの問題を追い続けてきた原義和監督が、1964年東京から派遣された精神科医岡庭武氏の記録した写真と当時のメモをもとに犠牲者の消息をたどる。
沖縄県の正史から闇に隠された歴史的事実が、今ここに浮かび上がる。


ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記

ドキュメンタリー 2020年 106分 カラー 監督:平良いずみ

北陸能登を出た15歳の少女は、子どもから高齢者 ( 夜間中学 ) がともに学びあう沖縄の珊瑚舎スコーレで高校3年間をおくる。一人暮らしをしながら故郷の新聞に連載した記事には彼女の純粋で鋭い感受性があふれていた。広大な米軍基地。県民の強い反対を押し切り埋め立てが進む辺野古。
米兵による女性への暴行事件や米軍機の墜落、部品落下が今も絶えない。本土に伝わらない「沖縄戦はまだ終わっていない」現実を目の当たりにして彼女が感じたものは?卒業後も、県民投票運動や辺野古の海人から学んだ生き方とは?「あなたが悲しいと私も悲しい」という意味の肝 ( ちむ )ぐりさ。「あなたも私も無力ではない」という言葉が響く。
2018 年「地方の時代」映像祭グランプリ受賞の沖縄テレビ開局 60周年記念ドキュメンタリーを基に映画化。


緑の牢獄

ドキュメンタリー 2021年 101分 カラー 監督:黄インイク

沖縄県西表島に暮らす 90歳の橋間良子。彼女は植民地時代の台湾から養父とともにこの島に来て、人生の大半を島で過ごした。自然の宝庫と言われる西表島にある「緑の牢獄」。明治期の近代化政策の一環で始まった炭坑が、密林の中に廃墟(はいきょ)として残る。
脱走、暴動、殺人、自殺が多発し、坑夫たちはモルヒネを常用していたという。
炭鉱の暗い過去、島を出て音信不通となった子どもたち……忘れることのできない数々の記憶が彼女の脳裏をよぎる。彼女はなぜ一人で島に残り続けるのか、記録映像や歴史アーカイブ、再現ドラマなどを盛り込み、台湾からこの島に渡った一人の人間の過去と現在を多角的に描いていく。前作『海の彼方』に続く「狂山之海」シリーズの第二弾。


むかしむかしこの島で

TVドキュメンタリー 2005年 48分 カラー 制作:沖縄テレビ放送

「島の形が変わった」と言われるほど激しい地上戦が繰り広げられた沖縄戦。米軍が撮影した沖縄戦の記録フィルムがアメリカ公文書館に保管されていた。
「反戦平和なんて僕には関係ない」と言い放つ上原正稔氏は、記録フィルムに残されている場所と人を特定したいと沖縄各地を調査し、証言を集めてきた。「大切なことは、沖縄戦を撮影したフィルムに、無数の沖縄住民の姿が映っているということだ。ボクは、フィルムの中の『主人公』たちに、この映像を届けたいんだ!」 各地で開かれた上映
会で、映像の中に、自分自身や家族、知人の姿を見つけて、人々の記憶が伻り、長い間秘めてきた思いを語り始め、フィルムに閉じこめられていた数々の「物語」が、明らかになっていく。


沈黙を破る時 ~封印された墜落の記憶~

TVドキュメンタリー 2014年 48分 カラー 制作:沖縄テレビ放送

米軍基地に隣接する沖縄県うるま市川崎。住民2人が犠牲となり、7人が重軽傷を負った米軍機墜落事故。長い間、封印されてきた大惨事の悲しい記憶。なぜ記憶は封印されたのか、沈黙とその理由を探っていくTVドキュメンタリー。
体験者の証言を掘り起こしながら、当時の映像群を検証。どの墜落事故を記録したものか、場所も日時も不明な映像を探る中で、沖縄では本土復帰後 42年間だけでも米軍機の墜落事故が45件も発生している事実を突きつける。
もし、自分の家族が米軍機事故に巻き込まれたら、あなたは現状を看過できるのか。事故で深く傷ついた男性と家族の半生を通して全国の人々に問いかける。第 23 回 FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品


サンマデモクラシー

ドキュメンタリー 2021年 99分 カラー 監督:山里孫存

「アメリカ世」といわれた米軍政下の沖縄。1961年高等弁務官になったキャラウェイは、沖縄にとって「自治は神話」と演説で公言、直接統治を強めた。こんな中で糸満出身の魚屋のおばあ玉城ウシが起こした「サンマ裁判」。
当時本土から輸入されるサンマに20%の関税がかけられ、値段が跳ね上がった。ところが関税リストの項目にサンマは入っていなかった。63年に税金還付を求めて琉球政府を提訴し、おばあは勝訴。ひとりのおばあが起こした裁判を入口に、自治権をかけて統治者アメリカに挑んだ沖縄の人々のドキュメンタリー。
のちにこの運動は民主主義と自治をめぐる運動に発展していった。沖縄噺家のしーさー(藤木勇人)の軽妙に語られる楽しくて厳しい沖縄現代史・沖縄の心。ここにはたくさんの学ぶべきことがある。