第五回 新・経済連続講座「雇用・労働問題-雇用身分社会の到来か-」

新・経済連続講座第5回「雇用・労働問題-雇用身分社会の到来か-」
アベノミクスと雇用情勢 雇用身分社会の到来か ディーセント・ワークの実現へ

    2017年12月 担当;眞嶋康雄    (練馬文化の会「会だより」2017.12 月号記載)

今回は「新・経済連続講座第3 回「賃金・給料と国民生活」に引き続き、雇用・労働問題を取り上げます。
「働けど働けど、我が暮らしは楽にならず、じっと手をみる、財布を見る」
民間給与総額は1998年から2016年まで増加せず、もし2016まで1998年水準が持続したら、340 兆円、同時期1%増加が持続していれば、合計 660 兆円の「逸失利益」が発生。日本の雇用・労働問題の根本的な課題は「低賃金構造」の打破です(図表1)
詳しくは「連続講座第3回」参照してください。

キーワードで解明、雇用・労働問題

 (1)「アベノミクス」と雇用情勢
◎「完全失業率3%」?「完全失業者;200 万人、実際は 380 万人以上。「完全失業者」とは月末に5日間ハローワークで求職活動した人など。1週間に1時間でも働くとダメ。
「隠れ失業者」、半失業者が大量に存在。1994年までは2%台だった。
◎「求人倍率1.5 倍」?これは全平均。「正社員」1.0 倍、パート1.8 倍、建築・土木4.9倍、食物・調理 2.7倍、福祉・介護 2.3 倍。
◎「働き方改革」は「働かせ方改革」①「脱時間給」=「成果主義」という名の「残業代ゼロ法案」、平日の休暇は無い?「年間 104 日の休日」は祝祭日の日数。②「残業規制」;「残業時間の上限」=月 100 時間は「過労死認定(80 時間)」を超える、つまり、国家が過労死を認定。③「同一労働同一賃金」;同じ仕事に原則として同じ賃金を払う原則は広く欧州に定着。核心は非正規と正規雇用との差を無くす「均等待遇」の実現であるが、政府はすでに崩壊した「年功序列制」を口実に難色。政府が実施するのは「不均等待遇」の説明義務中心、「均等待遇」の実現には程遠く。
◎「生産性向上」;政府が言うのは「従業員一人当たり利益率」いかに賃金を下げ、企業利益をあげるか。本来は「労働生産性」、雇用者人数÷GDP=「一人当たりGDP」で日本は22 位で低迷。

 (2)「雇用身分社会」の到来か
◎日本の女性、男女賃金格差は30~40%(OECD調査)。正社員でも格差大。女性非正規は 200万円未満が86%、女性正規でも200~300 万円が最も多い(図表2)

◎労働関係法の「規制緩和」は「小さく産んで大きく育てる」;怒濤の規制緩和、「派遣法の改悪の歴史。対象業種 1986 年「13 業種」、1996年 26 業種、2003 年全面解禁。派遣期間も 1年間から5 年間へ、元々、「職業紹介」は他人の就業に介入して「物」扱いにし手数料を取る行為として禁止だった。ピンハネ行為。
◎2016 年、大企業の労働分配率 43.5%低下、46 年前の水準に。一方、全企業の当期純利益は 2012 年の 23.8 兆円から倍増し、史上最高の 50 兆円。
◎増える非正規、減る正社員、雇用の劣化がすすむ。非正規は昭和 59(1984)年に 604 万人15.3%から平成 10(2000)年 1,173 万人、23.6%、平成 26 年1989%、38.2%(図表3)。図表3から雇用者総数は同時期に3,383万人4967 万人、5208 万人へと増加が続く。

 (3)「ディーセント・ワーク」の実現を
◎ILO(国際労働機構)の労働時間に関する18 の条約を全く批准していない日本政府。
◎労働時間の上限も休憩時間、有給休暇、育休・産休、割増賃金の規定が無い。
◎「三六(サブロク)協定」で残業やらせ放題、「年間残業時間2000 時間」。
◎Decent Work;「ディーセント・ワーク。人間らしい、尊厳ある、適切な働き方」VS「ブラックな働き方、働かせ方」
◎「ワーキングプア;働く貧困層」の解消、働く高齢者の増加「ルールある経済・社会」の実現を
以上に多い日本の長時間労働、勤労者自身による申告による労働時間の統計(図表4)

日本の「労働生産性=労働者一人当たりGDP」は 1995 年以来減少し続けている。労働生産性の増加と賃金・給料の増加と関係が深い(図表5)

★参考文献
「雇用身分社会」森岡孝二著 岩波新書
「ディーセント・ワークの実現へ」労働総研

新日本出版社

「働くルールの国際比較」筒井晴彦著

学習の友社

 お知らせ

「第3回公開講座「雇用・労働問題と国民生活-雇用身分社会の到来か-」
1月27 日(土)午後2 時~
練馬ココネリ 多目的会議室 資料\300
※国民の汗と涙の結晶をピンハネし、勤労者の権利を奪う戦前社会の「女工哀史」の再現か。
「公開講座第3回『賃金・給料と国民経済』」を予定にしています。
※参加者の疑問、意見に答え(できるだけ!)、参加者と共に考えよう。フリートークにもご参加を)