第二回 新・経済連続講座「あなたは大損させられている-一般消費税と税制の問題点-」

新・経済連続講座 第2回「GDPと経済成長」(GDP推移・GDP内訳・
名目と実質GDPと物価指数・名目GDP各国比較) コラム(今回はお休み)

    2017年7月 担当;眞嶋康雄     (「練馬文化の会・会だより」2018.7月号掲載)

前回の補足;①「景気と失業率・求人倍率」;政府は失業率の低下と求人倍率の高さをもって好況であると主張し、「完全失業率 3.1%、失業者 205万人」と言われていますが、完全失業者とは、「月末の最終週の 5 日間ハローワークで求職活動を行った者」という厳しい規定もあり、「就業希望者380 万人」が実体を反映しており、失業率は欧米の基準で統計を取ると 2 倍以上になるという研究結果もあります。有効求人倍率も 1.5 倍とされますが、正社員は 0.99 倍、事務職 0.36、建築・土木4.89、福祉関係 2.29 倍など偏りが多く、パートは1.8 倍で雇用のミスマッチが本当の所です。
②「国税徴収金」;「2016 年度税収 55.5 兆円」という報道がありますが、税収が戦後最高であった2015 年度で見ますと、「国税徴収済額=収納済額(73.4 兆円)-還付金・支払金(15.1 兆円)=歳入組入額(57.2 兆円)となります。上記「55.5 兆円」は歳入組入額のことで、本来の税収は「収納済額;約 71 兆円(推定)」です。収納済額と歳入組入額との差額の 3 分の 2(10.5 兆円)は消費税などの還付金で、8%増税で 5.1 兆円と巨額になります。
③「一般政府の債務超過」;国の一般会計と特別会計を合算し、複式簿記の原理に基づき財務省が国の財政状況を貸借対照表で表したのが上記の図で貸方の債務超過額は 520.8 兆円になります。


本来、貸借対照表の貸方(右側)には純資産(資本)がありますが、貸方の負債額が借方(左側)の負債額を上回ると純資産はマイナスとなり、差額は債務超過額となり、企業体では破産状態になります。この財務書類が初めて作成された 2002 年度には債務超過額は 240 兆円あり、日本の財政は事実上すでに破産状態にありました。
④「内部留保」;企業会計において、毎年生じる純利益を累積したもので、多くは「利益準備金」として処理され、トヨタの 2016 年度決算報告書には 17.6 兆円の利益準備金が記載されており、企業部門全体の内部留保は 400 兆円に達しています。

(1)GDPの推移
前ページ「図表1」は日本の名目GDPと経済成長率(GDPの対前年比)の長期的推移を示しています。1955 年から 1970 年代中頃までの年平均 10%前後の高度経済成長期、1990 年頃までの低成長期、それ以降、今日までのゼロ成長期と 3つの時期に区分されます。名目GDPは 1997 年の戦後最高額 533.1 兆円は 2015 年まで破られる事がなく、経済成長が停滞した「失われた 20 年」といわれます。GDPは国の収入、生産・流通・消費の経済活動の総計ですが、世界中を見回しても 20 年以も経済停滞をしている国はありません。日本の経済政策の誤りと失敗を象徴する数字です。

「図表2」は、1997 年から 2016 年まで約 20年間に平均 1%の経済成長率を実現できてきたと仮定(たら、れば)した場合、650 兆円のGDPを実現できたという仮定を示しています。2016 年度の実際のGDP約 538 兆円と比べ、110 兆円もの差があり、巨額の国債発行、国の借金の増大、様々な増税、国民生活の窮乏化も十分克服できたと想像に難くなく、経済政策の失敗の深刻さをあらためて実感させます。
(2)GDP内訳

「図表3」は 2016 年度の名目GDPの内訳で国内消費の割合は 54.5%、ほぼ 30 年間 52 から 55%を推移しており、GDPのほぼ 70%が国内消費であるアメリカと比べ、国内消費の伸びの弱さが目立ち、この事が停滞の要因となっています。
(3)実質・名目GDPと物価
GDPには名目と実質とがあり、実質GDPはその年の物価の増減を加味したものです。「図表4」は名目・実質GDPと物価上昇率を示したものです。2005 年に名目と実質GDPの伸び率が逆転したが、これは消費者物価指数が下がる状態が続いた結果です。名目GDPと消費物価指数は共に同じように推移しており、実質GDPが名目を上回るのは先進国では日本だけです。2014 年度の物価上昇は消費税増税の影響で、名目GDPの増加に大いに「貢献」しています。

(4)名目GDPの各国比較
「図表5」は名目GDP推移の各国との比較でIMF(国際通貨基金)の統計でドル換算です。1990 年から 2016 年までの 26 年間の日本の伸び率は最下位であるが、平均 142.1%を示したが、1995 年から 2016 年の 11 年間の平均は 82.7%の伸び率、唯一日本は減少傾向にあります。歴代の政権の経済政策の失敗を物語っています。

次回予告 新・経済連続講座第 3 回 「賃金・給料と労働時間、雇用問題」