練馬・文化の会 会だより 2019年8月4日号
練馬・文化の会 会だより
この6月末に日本五輪委員会(JOC)の代表が、
10年務めた竹田恒和氏に代わって柔道連盟の山下泰
弘氏が就任したことをどの程度の人が知っているの
でしょうか?五輪に責任をもつトップが五輪本番の
開催を1年後に控えて、フランス検察の贈収賄容疑
の追及を受けたために辞任に追い込まれたのですが、
この“事件”に対する日本のマスコミの追及がいかに
も弱い。
2020東京五輪については、金メダル争いをめぐる
報道は騒々しいのですが、その裏では商業主義が蔓
延し、自衛隊までが幅を利かせている安倍政権のも
と「平和の祭典」の色はますます弱まっています。
放送界は民放揃ってCMの効果を上げるための新し
い共同キャンペーンがもくろまれています。
教育現場では、各国選手の応援に児童・生徒が動
員されます。そのうえ、令和改元にちなんで、天皇
一族のイベント登場も数多く計画されており、復古
的な国家主義の強調さえ目立っています。8月24
日の学習会には「堤義明とオリンピックー野望の軌
跡」の著者・谷口源太郎氏に特別講演をしていただ
きます。
(田場記)
第4回を迎える「ねりま沖縄映画祭」の上映作品
と会場が固まり、8月末までにはPRリーフレット
が完成し皆さまにお届けするという段取りになって
います。この映画祭は公共施設を使って上映会を実
施するのが特徴の一つになっていますが、公共施設
の使用申し込みが2か月前のところもあるために、
チラシの作成がギリギリになってしまいます。会員
の皆さまにも次の9月号の「会だより」に同封して
お送りすることになります。
今回の映画祭で上映する作品とゲストトークをい
ただく方は下記の方々です。
——————————————————
〇 「遅すぎた聖断」(琉球放送制作);9月22
日(土)午後1時15分~上映 トーク(山田朗・
明治大学教授);午後2時15分~ 武蔵大学1号
館1002教室
〇 「森口豁ー・沖縄と生きる」(永田浩三制作):
9月22日(土)午後2時45分~上映、
トーク(森口vs永田):午後5時30分~
武蔵大学1号館1002教室
〇 「ナビィの恋」;9月23日(月・祝)午後2
時~上映、トーク(仲江裕司)午後3時35分 ―
区役所多目的会議室
〇 「デジタルで甦る沖縄」:9月23日(月・祝)
午後5時30分~上映、トーク(真喜屋力)
午後7時半~―区役所地下多目的会議室
〇 「沖縄スパイ戦史」;9月28日(土)第1回
上映―午前10時半~ 第2回上映―午後1時半~
トーク(富山幸都)午後3時25分~ ―区役
所地下多目的会議室
〇 「ウンタマギルー」;10月3日(木)午後6
時15分~上映、トーク(高嶺剛監督VS 古賀教授)
午後8時15分~ ―日本大学芸術学部EB2教室
〇 「スケッチ・オブ・ミャーク」;10月5日
(土)午後6時45分~上映、トーク(久保田真琴)
午後8時15分~ ―生涯学習センターホール
〇 「まぶいぐみ」:10月6日(日)午後6時~
上映、―区役所地下多目的会議室
〇 「サルサとチャンプルー」:10月12日(土)
午後6時~上映、トーク(波多野哲朗)午後7時4
0分~ ―区役所地下多目的会議室
〇 「OKINAWA1965」;10月14日(月・
祝)午後6時~上映、トーク(都鳥伸也、嬉野京子)
午後7時35分~ 区役所地下多目的会議室
(田場記)
映像による被爆体験の継承”を目的に、今回で1
3回目となった被爆者の声をうけつぐ映画祭2019は、
7月13日(土)と14日(日)に武蔵大学江古田キャ
ンパスにて開催されました。練馬・文化の会、日
本原水爆被害者団体協議会(被団協)、ノーモア・
ヒバクシャ記憶遺産を継承する会の後援を冠に、
武蔵大学社会学部永田浩三ゼミと映画祭実行委員
会の共催で、8プログラムに800名の参加者を迎え
て成功裡に終えることができました。みなさまの
ご協力に深く感謝いたします。
記録映画『広島・長崎における原子爆弾の影響
長崎編(完全版)』は、米軍の介入で‟幻のフイ
ルム”と云われた作品。鑑賞後に長崎で被爆した
木戸季市氏の力強いトークもあって96名の参加者
を得ました。今村昌平監督の名作劇映画『黒い雨』
は、根強い人気。斉藤とも子(女優)さんの「被
爆者との出会い」との特別講演も大好評で254名の
参加者がありました。
核時代のアメリカの狂気を活写したドキュメンタ
リー『アトミック・カフェ』は、日本で27年ぶり
の上映。二度の上映で計135名。第五福竜丸事件を、
アメリカ人の監督がアニメーションにした『西か
ら昇った太陽』には、都立第五福竜丸展示館学芸
員の市田真理さんの講演「表現されるビキニ事件」
がセット。これが注目を集めて153名の参加。
映画祭の最後は、武蔵大学の学生たちが被爆者
たちに取材をしてつくったドキュメンタリー『声
が世界を動かした~ノーモア・ヒバクシャ記憶遺
産の継承センター設立に向けて~」を観てのシン
ポジウム。永田浩三教授の司会で、武蔵大学生と
昭和女子大生、そして被団協事務局次長の濱住治
郎氏を交えて「被爆者から受け取ったもの」との
熱い討論に60名が参加。若者たちが被爆体験の継
承に真摯に取り組んでいることに、観客から「驚
きと希望を感じた」との声が寄せられました。
「平和なくして文化なし」「文化なくして平和
なし」の趣旨で美術を愛する人たちが、創設され
48回(48年)を迎えたこの展覧会は、5日間
で1093名の来観者で賑わいました。
出品者100名の方から158点の力作を展示で
き、感謝申し上げます。多くの方々のご協力のも
と無事終了できました。同時にお忙しい中、ご来
観された皆さん、ありがとうございました。
一つ一つの作品は、作者の思いが詰まったもの
であります。少しでも明日に希望が持てるようこ
の展覧会を通してなにかを感じ取っていただけた
ら幸いです。来観者の一人は、「とても暖かい雰
囲気が感じられ、一人一人が自由に表現している
のがよく伝わりました」とのこと。合評会もお互
いの作品の制作の過程の悩みなども出され、励ま
し合いながら交流できました。
文化は、言うまでもなく人間特有のものでお互
いが表現を通して交流し、それぞれの生き方を学
べる場でもあります。そして何より今の社会に対
してどう幸せに生きていくかが共通の課題でもあ
ります。特に若い世代の方が、芸術分野に時間を
割こうにも残業が多く、休日も出勤というのが当
たり前の働き方です。8時間働ければ誰でも経済
的にも安心して暮らせる社会を作るべきです。平
和が壊されそうな動きが強まる中、文化を通じて
警鐘乱打すべき時でもあります。
この展覧会は、無審査・無賞ですが、作者の思
いを真剣に表現できる場でもあります。18歳以
上で要綱を認めていただければどなたでも出品で
きます。もし来年の展覧会へチャレンジしてみた
いという方は今からご準備しお声をかけてくださ
い。また来年お会いしましょう。
今年4月から6月まで3回にわたり、文化の会
主催の表記学習会が行われました。参院選挙を
前に大きな焦点になるはずのテーマでした。学
習会を終わって感じるのは、学校教育をはじめ
社会全体で経済の基本的な知識の学びが不足、
また研究者やメディアからの情報提供の不足、
その結果の経済と生活問題の関心の低さを痛感
し、改めて地道な地域の学習活動の大切さを痛
感しました。
しかし「難しい」という参加者の声を尊重し、
なるべく事実を知っていただく事を主眼に多く
の目新しいデータの提示を行い、2年前からの公
開講座からの蓄積を踏まえ50の図表を記載し
た配布資料を完成させることができました。10
月にはテキストとして刊行予定です。学習会の
開催に協力いただいた幹事をはじめ会員の皆さ
ん、ありがとうございました。
なお、2年来の学習会活動の経験から、今後は特
にテーマを決めず、その時々の経済や社会の話
題について語り合う「経済カフェ」のようなの
を開催できたらと考えています。
今回の参議院選の最大の争点は「憲法改悪勢
力」が、三分の二を占めるかどうかという点に
あったが、自公に維新を加えても160議席と4議
席の差で到達できなかった。
第二は、自民党が113議席に終わり、前回より
10議席を減らした。投票数も投票率が48,8%と
下がったために、比例区で、2000万票を取れず、
東京の比例区では213万票から188万票へ落ち、
練馬区でも11万5千票から10万票にさがった。
同じく公明党も全国で100万票を落とし、東京で
71万から66万票に下がり、練馬区でも3,7万票か
ら3,4万票とおちた。マスコミ含めて、現政権が
勝った勝ったと騒いでいるが、事実は違う。
第三は、維新が大阪地方区から全国区になっ
たこと。「反動的な立場」から「改革者」とし
てのイメージ化が成功し、「身を切る」言葉で、
だましまくった。「真の改革」とは何かを事実
で明らかにしなければならない。
第四は投票率の低下だ。95年に次ぐ48,8%しか
も18、19歳で31,33%と非常に低かった。これは、
マスコミ及び政権与党が徹底して「投票封じ」
を行ったことも一つの原因だろう。ただし、国
民の中に、自分の生活や生き方と政治を切り離
す傾向が根強くあるという問題です。政治は特
別の人がやるもので、自分は関心もないし、選
挙に行っても何も変わらないというあきらめと
無関心がただよっている。この社会状況をどう
打開していくのか、真剣に考えなければならな
い。
それでは、これからどうするか。政治を変え
るのは、「市民と野党の共闘」以外にないとい
うことだ。33の1人区は3年前よりは11から10人
に減ったが、6年前からは2議席から10議席に増
えた。ここに展望がある。今回の「市民と野党
の共闘」は、市民連合の後援もあり、政策協定
などを結びながら「共闘」できたのは、大きな
前進とみられる。特に問題があった秋田、新潟、
沖縄などは、市民運動立憲野党の結束が実を結
んだ例だ。また「れいわ」が比例区で2名を当選
させたことは、一部では左派ポピュリズムと言
われているが、今までの山本太郎の行動を見れ
ば、実質的な「市民と野党の共闘」メンバーで
あり、憲法擁護の主要政党であるのは間違いな
い。
この秋には、消費税の増税とともに「憲法改
悪」を執念をもって国民に押し付けてくるだろ
う。さまざまな市民の闘いでこの安倍の野望を
つぶさねばならない。
7月25日夜、練馬区役所地下多目的会議室に
て、「知っていますか?ヘイトスピーチ解消法…
私たちの街でできること」をタイトルの下、弁
護士の師岡康子さん(東京弁護士会)を講師に
お招きし、施行から3年目を迎えるヘイトスピ
ーチ解消法の現状と私たち住民の課題について、
勉強会を持ちました。参加者は84名。
練馬区におけるヘイトスピーチをさせない、
許さない運動の必要性について、私たちが危機
感と問題意識を持つきっかけは、本年春の統一
地方選挙(練馬区では区議会議員選挙)でした。
「選挙に立候補し、選挙運動を通じてヘイト」
を繰り広げるレイシスト(排外的な人種差別主
義者)やカルト諸派が、全国各地で一斉に登場
し、練馬の街かどで、また区立施設を利用して
ヘイト宣伝、活動を始めたからです。6月8日に
は、ジャーナリストの安田浩一さんをお招きし
て「ヘイトをさせない!許さない練馬の集い」
をもちました。(『会だより』前号参照)
安田さんの提起…「あんなとんでもない連中」
と見下し、放置しておけば、地域に職場に隣人
に「排外の空気」が充満していき、関東大震災
時の朝鮮人、中国人虐殺のようなことが起きか
ねない…を受け、私たちは新たに「ヘイトスピー
チ許さない・練馬」というグループをつくりま
した。
新しい構成による練馬区議会(第二定例会)
でも、複数の区議がヘイト問題を取りあげ、練
馬区の認識を質しました。練馬区の見解(概要)
は「①ヘイトスピーチは不当な差別的言動であ
り許されるものではない。差別的言動の解消に
向けた取り組みを複数実施している。②公の施
設利用は、条例・規則等にもとづき可否を判断。
(ヘイト活動に関連して)現時点ではガイドラ
イン等の作成は考えていない。③(都条例の公
の施設の利用制限基準に言及しつつ)東京都や
他自治体の対応を注視、研究を深めていく。」
というものです。つまり練馬区は「注視、研究」
は深めるものの、自治体の責務として積極的に
施策を定める段階に至っていないのです。
今回の講演会は、練馬区の状況をふまえ、そ
もそも「ヘイトスピーチ解消法」は国際社会も
含め、どのような歴史的な背景や取り組みの結
果、成立するに至ったのか。法施行から3年を
経て、日本の社会への効果、影響、同法付帯決
議に謳われる自治体の責務の具体化(例えば条
例化)の実例等をトータルに勉強していく第一
歩として企画したものです。
師岡さんが用意された資料は膨大で、スタッ
フからは「資料代500円じゃ安すぎじゃない」
という意見も出るくらい充実したものでした。
立法過程からこの課題に深くかかわり、また
自治体の条例化にもコミットされてきた師岡さ
んならではの講演を練馬区で行えたことは実に
有意義だったと思います。講演内容全体をお伝
えするには紙数がとても足りません。今号には
当日のレジュメを「付録」として同封させてい
ただきますので、ぜひお読みになってください。
手ごろなテキストとしては師岡さんが2013年に
書かれた『ヘイトスピーチとはなにか』(岩波新
書1460)がおススメです。
「ヘイトスピーチ許さない・練馬」では、こ
れから練馬区への働きかけをどう具体化してい
くか、議論を重ねています。あなたもメンバー
に加わってみませんか。心よりお待ちしていま
す。